「いのちの乳房」:撮影はアラーキー、荒木経惟
先日、「いのちの乳房~乳房再建に挑んだ女神たち~」という番組を見ました。
乳がんによる乳房摘出の後、乳房再建に挑んだ女性たちの写真集、「『いのちの乳房』-乳がんによる「乳房再建手術」にのぞんだ19人-」をめぐるドキュメンタリーです。
乳がんにかかる女性は年々増えており、女性にとって乳がんは他人事ではありません。乳がんの治療では乳房摘出手術が行われることも多いのですが、患者さんは、女性性の象徴ともいえる乳房が無くなったり、傷つくことで、大きな精神的苦痛が残ります。「乳房再建」はシリコンや自らの脂肪やその他組織を使用して乳房を再建する手術で、乳がん患者さんたちの心の苦しみを和らげ、QOLを高める手術です。
しかし、乳房再建手術を受ける人は、乳がん手術経験者のわずか8%。「乳房再建手術」はまだ認知度が低く、決してスタンダードな方法ではないのです。 続きを読む
この本は死産を体験した井上文子、修一夫妻が第一子「和音」ちゃんを死産で亡くし、そしてその後、第二子、和音ちゃんを同じ病院で出産した経験を、井上夫妻、病院の長谷川充子師長の手記、や竹内正人医師を交えた座談会などを通して綴った本。死産をめぐる両親の体験や、現在の周産期の死をめぐる課題が解る、どちらかというと医療関係者向けの書籍です。
産婦人科医の竹内正人さんは産婦人科医として「救う」「助ける」で医療にかかわるうちに、「救えなかった子どもたちとその家族」に視線を移し、2006年、ホーリスティックな医療を行う「東峯ヒューマナイズドケアセンター・ラウンジクリニック」を開設。生まれた赤ちゃんの生死だけでなく、その生が父母の元に訪れたことが重要であり、赤ちゃんが亡くなっても父母である事には変わりがないという視点で医療に携わっています。 続きを読む
グリーフケアの勉強をする中で驚いた事の一つに死産の数の多さがあります。日本の周産期の死亡率は世界第一の低水準にあります。しかし、2010年の厚生労働省の統計によると、法的な死産の定義である12週以降の死産は27,000件と報告されています。近年、自死の数が年間30,000件を超えた事が話題になり、グリーフケアの観点からも、その遺族の悲しみには心を痛めていましたが、それに近い数の家族が、子供の死を経験しているのです。
そして、これだけ多くの人が死産を経験しているのに、そのことは一般的には知られてるように思われません。ここには、死産の「沈黙の性質」があるのではないか、と感じます。流産もそうですが、周産期の死は「公認されないグリーフ」(詳しくはこちら)になるケースが多くあり、語られない死の様相を呈する事がしばしばです。 続きを読む
ビクトリア女王:黒いドレスにジェットの装飾が施されている
9月3日、私は勉強も兼ねて、数年ぶりにジャパンジュエリーフェアを見に行ってきました。そこで、ジェットジュエリーを展示しているブースを発見し、思わず立ち寄る事になりました。ジェットのジュエリーは博物館などで見たことはあるものの、手に取るのは初めて、初めて間近に見て、触れて、その重量感や質感を堪能する事になりました。
私が初めてジェットジュエリーの事を知ったのは、数年前に、講演のために「故人の体の一部を身に着ける」事の歴史的な変遷を調べていた時の事でした。
ジェットは日本では黒玉と呼ばれるもので、地中深くに堆積した植物が化石化したもので、それは軽く、あくまで濃い漆黒の黒い宝石。質感はメノウや象牙をイメージしていただくとよいでしょうか。ジェットは研磨により非常に美しい艶を持ち、またその艶が長持ちすることで知られています。 続きを読む
盛岡でもようやく桜が咲き始めた
4月19日、私はGCCの鈴木剛子先生、麗澤大学の水野治太郎名誉教授、GCCの卒業生や現役生徒と共に盛岡を訪れました。20日に行われる、岩手医大の智田文徳医師が主催する「精神科医によるリラクゼーション・ワーク体験」のファシリテーターを務めるためです。新幹線はまだ動いておらず、羽田から花巻空港に飛んでから、バスで盛岡にたどり着きました。
東日本大震災の後、グリーフカウンセラーとして何かできることはないかと考えていましたが、なかなか単身乗り込んで役に立つものでもなく、悶々としていたところに鈴木先生から声をかけて頂いて、渡りに船と参加することになりました。 続きを読む