グリーフの勉強をしていると、「公認されないグリーフ」というのが出てきます。その故人との関係性や、死因、その他の要因で公的に悲しむことを許されない/出来ないケースがあり、その結果十分なサポートが受けられず、グリーフが複雑化(長期化、深刻化など)する傾向がある、という考え方です。
一般的には、愛人関係、ゲイ、自死、死産などがこういったケースに当たりますが、私は、友人にゲイが多いので、ゲイのグリーフに特に興味を持っています。興味、というのは適切な言い方ではないかもしれませんが、その悲しみの質に心を痛める者である、ということです。 続きを読む
死別の経験、特にその痛みが比喩としてどう表現されているのでしょうか。
もちろん死別体験者の方は「そんなこと説明してもらわなくても痛みは知っている」「比喩に意味があるのか」と感じられると思いますが、喪失をどのような経験や痛みに例えるのかというのは非常に興味深い問題で、ただ「痛い」というだけでなく「どのように痛い」と表現することは「痛みとの付き合い方」とも深い関係があるのではないかと考えています。
最近読んだ「妻を看取る日~国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録~」【著者:垣添忠生(新潮社 2009年 1300円)】には外国の文献の引用として「サメに襲われて手足をもぎとられたような感じ」「体のどこかに深い穴が開いて、そこから血が滴っているような感じ」といったようにシャープな痛みから鈍痛のような痛みまでが表現されています。さらに著者は医師であることから、妻の死のショックからの回復を傷の治癒になぞらえてこう的確な表現しています。 続きを読む